本のソムリエ

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【書評】エースと呼ばれる人は何をしているのか

今回取り上げるのは、この本です。

kindle版も出ています。

エースと呼ばれる人は何をしているのか

エースと呼ばれる人は何をしているのか

 

 

この本の見所を、勝手に一言で表現すると… 

  1. エースとセンターは違い、エースなら誰でも努力次第でなれる
    • センターとは「場所」である。要であり中心でありチームの顔である
    • エースとは自分の実力や魅力を発揮して輝いている人である。
    • センターはエースだが、エースはセンターではない
  2. エースの要素は自己の確立、自信、前進する力の3つである
    • 周囲を気にし過ぎたり、自分がどんな風に見られているかを気にし過ぎてははエースにはなれない。新しいものを生み出せない。
    • 自分が今まで積み重ねてきたものだけが絶対であり、自信の根拠になる。結果に繋がる正しい努力こそが大事。
    • 目標に向かって前進だけできる人がエースであり、ダメだったらどうしようと考えている段階で「逃げ口上」を作っている。

 

 

不思議な本だ、と思いました。

言っていることは正しいのですが、もって回った言い方になっているせいか、何を言っているのかがよく解らないのです。

これは、編集者の責任ではないでしょうか。おそらく、夏氏の原稿をある程度そのまま書籍化されたのではないかと推測します。しかし言いたいことは凄く重要なことだと思うので、エッセンスはそのままに文体のビルド(構築)はどこかのライターに任せても良かったのではないかと思います。

 

さて、この本で描かれているのは、努力を通じて、誰もが「エース」になれるという夏氏の経験談です。振り付け師として様々な場数を踏み、浮き沈みの激しい芸能界で数十年も生き抜いて来られた彼女だからこそ、その言葉には重みがあるなぁ、と感じます。

 

ずっと私は、アイドルの生き様は、サラリーマンこそ見習うべきだと私は思っていました。とくに、なんだかんだと批判もされるAKB48ですが、彼女たちが生き残るために何をしているのかについて知るほど、サラリーマンがどうやってこの先を生き残るかを考えるための知恵になると思うのです。

舞台(テレビやライブ含め)で輝くために努力をするだけでなく、SNSなどを通じて情報発信する様は、まさに日夜成果をあげるために頑張っているサラリーマンそのものではないでしょうか。

特に、夏氏の言うように「エース」と「センター」は違うという言葉は奥が深いと思っていて、これを組織に置き換えると「誰もがエース社員になれるが、誰もがその会社の顔(役員とか)になれるわけではない」という意味になるのではないかと考えます。

努力をして成果をあげられない人が多くいるなかで(つまり成果になるための努力ができていないなかで)、役割を認識しやるべきことをやって成果をあげればエースにはなれます。しかし、それだけでは「センター」(要)とは言えない。

これ、結構残酷なことを言っているなぁ、と思うわけです。

 

この本の8割から9割は、どうすれば「エース」になれるのか、について心構えや考えについて書いています。しかし、どうすれば「センター」になれるのかについては書かれていません。

もしかしたら、持って生まれたもの、天賦の才能なのかもしれません。だとしたら、それは凄い酷な話です。なぜなら、人による向き不向きが持って生まれたものなのですから。

そして恐らく夏氏は「今いる場所で花を咲かせましょう」「自分の適切な場所で精一杯やりましょう」と言っている。

映画「ハゲタカ」でも劉一華(玉山鉄二)が守山(高良健吾)に向かって「元のいた場所に帰れ」と言っていたシーンがありましたが、華やかな芸能界で活躍している人間が「今いる場所で活躍している人はみんなエースだ」と言うと、芸能界に憧れだけを抱いてやってくる人間の大半は不向きなんだよと言っているようでなんだか泣けます。

 

今いる場所で華を咲かせることは大事です。しかし、要になりたいという野心も私は大事だと思っています。

大事なことは、自分自身がその野心に合った努力をして、かつその野心に合った器なのかどうか、ということなのでしょう。